障害者雇用代行ビジネスとは?
いま話題の障害者雇用代行ビジネスについて分かりやすく解説します
この現実を知って社会にはまだまだ障害者雇用というのを正しく理解していない、障害者をバカにするなという感情が芽生えてきました。
働く場所と働く障害者をセットにして提供する「障害者雇用代行ビジネス」の存在です。
法定雇用率の問題
障害のある人の社会参加や社会復帰を促す法律が整備され企業が障害のある人をより多く雇用しなければならなくなりました。
企業は障害者の雇用が義務づけられ、年々法定雇用率が引き上げられ2021年には2.3%になりました。
- 法定雇用率を達成している企業は全体の47%
- 法定雇用率未達の企業は56,618社
- 障害者を一人も雇用できていない企業は32,644社
法定雇用率をクリアしている企業には障害者1人雇用につき30,000の助成金が支給されますが、法定雇用率の基準をクリアできない企業は不足分1人つき50,000円の納付金が徴収されます。これは企業にとってかなりの負担です。
企業にとって法定雇用率をクリアすることは重要な経営戦略です。
多くの企業では障害者雇用のノウハウがない
障害者雇用では能力、経験などを考慮し、適正な仕事量や過度な職責にならないように適正に配慮しなければなりません。
しかし、一部の大企業を除いて大多数の企業では障害者雇用のノウハウがありません。障害者雇用のシステム、どんな仕事を任せたら良いかなどといった基本的な知識もありません。働きたい障害者を確保する手段もありません。
この状態ではとうてい法定雇用率をクリアできることはありません。
そんな背景がある中で登場したのが「障害者雇用代行ビジネス」です。
障害者雇用代行ビジネスの仕組み
「エスプール」「ファーズマーケット」といった人材派遣会社が働きたい障害者を募集・確保し、法定雇用率がクリアできずに苦しんでいる企業に派遣します。企業は派遣された障害者と雇用契約を結び、給料を支払います。障害者は人材派遣会社が運営する農地で農作業を行います。
利用する企業は農地を運営する人材派遣会社に紹介手数料を支払います。
働き手である知的障害者や精神障害者は人材派遣会社が集めてくるので利用企業は自ら集めなくていいのです。
利用する企業にとっては金銭的な負担はあるけど、働き手の障害者を確保して法定雇用率をクリアするためには極めて合理的なシステムです。
働く現場の現実
人材派遣事業者から派遣された障害者は企業と雇用契約を結ぶわけですが、実際に働くのは企業の本部から遠く離れた農園です。
農園では「養液栽培」という方法で野菜を育てるため土を使わない。農地で働く障害者は水やり、種まき、収穫と軽作業だけで済むのですぐに終わってしまう。一日の労働時間のうち大半が休憩時間なのだそうです。
収穫された野菜は売り物にはせず、大半は利用企業へ無料配布されるそうです。
利用企業の関係者は障害者が働く農園には時折出向くことはあるけど積極的には関わらない。健常者と障害者は全く別のところで働き関わりあう事はないのです。
障害者雇用代行ビジネスの問題点
この障害者雇用代行ビジネスは「法定雇用率を金で買うようなものだ」「障害者の能力を理解していない」「障害者は障害者だけの世界で働けというのか」との批判があります。
企業が障害者雇用代行ビジネスを利用する背景には「障害者を支援する環境を整える余裕がない」「障害者がいると生産性が下がる」という考えが企業にあると思います。
問題なのは、利用する企業の大多数は農業とは無関係であることです。農業に関するノウハウもなく、雇用関係を結んだ障害者の管理を農園を管理する事業者に丸投げしてしまう事です。
また、障害者にはごく簡単な作業をさせておけばいいという意識もあるかと思います。
その根底には「障害者は扱いにくいもの」「面倒なもの」といった差別や偏見の意識があるように思われます。障害者を理解する、向かい合うという姿勢があるとは思えないのです。
更に問題なのは、この障害者代行ビジネスを自治体が後押ししている点です。
愛知県豊明市、みよし市、春日井市、東海市、さいたま市といった自治体が農園を誘致し運営会社と協定を結んだそうです。
誘致に携わったある自治体の関係者は「単純な作業は知的障害者にピッタリ。これからも積極的に協力していきたい」と言っているそうです。
楽な仕事だから向いているという決めつけは偏見や差別意識に満ちた屈辱的な発言です。
行政は企業における障害者の職場環境の整備、職場への定着を支援する立場です。それなのに企業と一緒になって障害者雇用代行ビジネスを推進しているのは、行政の本来の役割を放棄しているとしか思えないです。
まとめ
障害者雇用代行ビジネスなどというシステムが横行しているという現実は、多くの企業障害者雇用について理解していないのだなと残念な気持ちになりました。
いくら障害者雇用のノウハウがないのにせよ、障害者は扱いにくいもの、面倒なものだとし、農園などという健常者が普段働く場所とは全く違うところに働かせる。そこで働く障害者に給料だけ払って関わろうとしない。障害者を戦力とみなそうともしないし、育てようともしていない。
障碍者雇用の整備がまだなのに、法定雇用率だけに目くじらを立てている行政の姿勢がおかしいです。高い法定雇用率をクリアするために企業に負担がかかってこのしくみに手を出してしまうのは分からなくはないですが・・・
依然として障害者に対する差別や偏見があるのが現実です。この現状を皆さんに知ってもらいたくてこの記事を書きました。
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