職場で強いこだわりのある発達障害者とどう付き合えばいいか
こだわり強い自閉症スペクトラム障害とは
こだわりの強い自閉症スペクトラム障害の人がいますが、どう付き合えばよいのでしょうか
人間ならだれでも「こだわり」ってありますよね。
朝起きたらこの時間に必ずこれをやると決めてその通りに行動する。たとえば朝食を食べたら必ず歯を磨くとか(人間としての最低のマナーかな?)、必ず新聞に目を通してから仕事に向かうとか。
ファッションなんかでも、他の人と違うファッションにする事にこだわる人がいます。服装に「自己表現」「清潔感」「季節感」「シンプルさ」「他の人とは違う個性」を求めるのです。
野暮な話ですが、女性にもてるようになるにはまずはファッションからという事で服やアクセサリーを買うのに金に糸目をつけない人もいます。これも「こだわり」ですよね。
自分なんかは服装に無頓着で、とにかく着られればなんでもいいと思っています。(こんなんじゃ女性にもてないかな)
職場にこだわりの強い人がいるとやりにくい
話は変わりますが私の仕事先でこだわりの強い人がいます。
私は某大手ファミレスチェーンの会社を親会社とする特例子会社で働いていますがが、仕事内容はそのグループ企業から依頼されるものがメインです。その中の業務として「データ入力」というのがあります。
親会社が運営している全国各地にあるお店から売り上げのレシートがA4の紙にセロテープに張り付けられたものが送られてきます。そのレシートに記載されている売り上げ金額や原材料の仕入れにかかった金額などをパソコンに入力していくわけです。
この業務の目的は本部に集計されるPOSデータと実際の店舗で発生するお店の売り上げや仕入れの金額が一致するかどうかレシートの金額を入力する事によって調べるわけです。
お店の方は売上レシートを紙に張り付けて私の働いている特例子会社に送るのが決まりになっているのですが、うちの部署に届くものは忙しいためかセロテープの貼り方がいい加減で今にもはがれそうだったりします。
またレシートの上にレシートを重ね張りしていたり、紙からはがれないようにテープを厳重に貼っているのもあります。重ね張りされていたり、さらにその上でテープが張られていたりするのがあるのでレシート一枚一枚が見えないので入力するのに支障があります。
入力しやすいようにするためいい加減なテープの貼り方をしているものを修正したり、重ね張りしているを一枚づつ貼り直したり、めくれれるようにテープをカッターでカットする必要があります。それを行う作業をするチームが別にあります。データ入力作業やこの修正作業の業務はメンバーが交代で行います。
データ入力を行うチームになったときはメンバーは入力しやすいようにレシートを修正したりする事は必要なく売り上げデータをパソコンに入力する事だけに注力すればいいわけです。
データ入力作業チームになっているのにかかわらず、紙に貼られているレシートの貼り方が気に入らないと自分で修正している人がいます。ただ入力だけすればいいのに。これが先ほど書いた「こだわりの強い人」です。すこしでもレシートがはがれかけていたりいい加減な貼り方になっているのが許せないようなのです。
このデータ入力作業は紙100枚を一つの単位としています。データ入力件数は100件です。他の人がこの作業をすると入力するだけなのでこの100件のデータを入力するのに30分もかかりません。ところがこの人がこの作業をやるのにいちいち修正をするので2時間くらいかかってしまいます。
なぜ、この人は必要ない作業をここまで一生懸命にやっているんだろう
私はこの人と机を並べて横で作業しているのですが、「パソコンに入力するだけでいいのになんで修正作業までしているのか?」といつも不思議に思い「そんな事をやらなくてもいいからさっさと入力して終わらせろ」とイライラしてしまいます。
自分も発達障害なのでその人の事を批判したりする立場ではないですが、自分は彼と正反対で、とにかくせっかちで自分の周りにちんたらやっている人を見たりするとイライラしてきます。
私も含めてもしこんな人が部下だったらどう思いますか?
発達障害のある人のこだわりとは?
うちの会社ではお互いのメンバーの障害が明らかにされませんが、この人はおそらく発達障害の自閉症スペクトラム障害(ASD)ではないかと思います。
自閉症スペクトラム障害のある人は特定の物事に強いこだわりがあります。
先ほど書いた人の事ですが、修正作業にしてもデータを入力しやすいようにすればいいだけだし、その作業は別のチームが行うので入力する段階になって修正作業をする必要はないのです。この人がきちんとテープが貼られていないと気が済まなくて入力する段階になって修正作業をするのは「きちんとしなければならない」「完璧にきれいに仕上げないといけない」という強い「こだわり」から来るものだろうと思います。
つまりこの人はそのこだわりによってやらなくてもいい作業まで時間をかけてやるのです。丁寧なのはいいのですが・・・
データ入力という作業は正確性だけでなく速さも求められますから、この人がこの作業をやることによって一緒に作業をする人のペースが乱されるし、チーム全体の作業量が落ちてしまいます。こういう人と一緒に作業する同僚や上司は迷惑だと感じてしまうと思います。
普通の人と自閉症スペクトラム障害のだわりの違い
人によっていろいろなこだわりがあります。こだわりのない人はおそらくいないと思います。
自閉症スペクトラム障害の特徴として「特定の物事に強いこだわりがある」というのがありますがそう考えると人間は全て自閉症スペクトラム障害だという事になってしまいますが、普通の人のこだわりと自閉症スペクトラム障害のある人のこだわりには明確な違いがあります。
たとえば普通の人が部屋に入る時からならずどちらかの足から入るとか、だれか特別な人と会う時はいつもは絶対に着ないその人のためだけに作った服を着るとか。そのようなこだわりはその人にとってゲン担ぎや精神を平常に保つなどの作用があります。おしゃれにしても自分を輝かせたいという意思があります。
アスリートやプロスポーツなどが行うルーティンもこだわりの一つですが、これは試合に勝つために自分に気合を入れるとか、気持ちを落ち着かせるという意味があるわけです。
普通の人が見せるこだわりはその人の意思であり、嗜好によるものです。
ところが自閉症スペクトラム障害のある人のこだわりとは「反復的で常同的な様式と興味と行動の制約」と言いまして、脳から強制的にそのこだわり行動をするように支配されている状態なのです。
だから普通の人から見ると、「なんでそんなどうでもいい事ややらなくてもいい事にこだわるの?」と感じるのです。でも当人にとっては脳の命令に逆らってその場に応じた臨機応変な行動が取れず、自分で勝手なルールを作りその中でしか行動できないのです。
職場や家庭で強いこだわりのある発達障害者とどう向き合えばいいのか?
このような強いこだわりがある人が職場や家庭にいたらどのように向き合い対処していけばいいのか考えてみたいと思います。
自閉症スペクトラム障害の特徴として以下の点があげられます。
- 特定の物事に強いこだわりがある
- 場にそぐわない行動を取ることがある
- 他人の気持ちを想像できない
- 規則や習慣に強いこだわりがある
- 融通が利かずとにかく頑固である
- 人との距離感が分からない
- 冗談やたとえ話が通じない
- 暗黙のルールが伝われない
- 突然の予定変更に対応できない
- 気温や湿度、音、光などの刺激に敏感
先ほど書いた人のように自閉症スペクトラム障害のある人は仕事の手順や方法に強いこだわりがあり、仕事は細かいが段取りが悪く、無駄な作業が多い傾向があると思います。「なぜそんなことにこだわるのか?」って疑問に思ってしまうほど仕事が細かくやたらと時間をかけながら作業をします。
そして一人で黙々と作業に熱中しますが、一人の世界の中に閉じこもて周りの人とコミュニケーションを取ろうとしません。
そのような人と一緒に働く周囲の人はその独特の行動に戸惑いどう対応したらよいか分からなくなり、頭を抱えてしまうと思います。
参考になるかわかりませんが、そのような人にどう対応しているか、うちの会社で実施している方法をご紹介したいと思います。
こだわり強い自閉症スペクトラム障害 特性を理解し否定しない
私はスピード性を求められるデータ入力の業務なのに、「完璧にきれいに仕上げなければならない」という強いこだわりのもとやらなくてもいい作業まで時間をかけてゆっくりとやっている人にイライラし、会社の支援員に相談しました。「会社として彼に注意をしないんですか?}と。そしたら支援員はこう答えました。
「○○さんはそういう特性なので、彼の好きなようにさせてます」
いや~さすが特例子会社。よく心得ていると思いました。
まずはそのような特性のある人の事を理解し、否定しない事です。
作業マニュアルとスケジュール表を作る
発達障害のある人は仕事の手順を考えるのが苦手で、仕事を終わらせるのにどれくらい時間がかかるのだろうかと作業に必要な時間を推測するのが苦手で、しかも作業の締め切りに間に合わせるためのスケジュール管理が苦手です。強いこだわりがある人は作業の締め切りなど全くお構いなしにマイペースです。
こういう人達に計画的に自分の仕事を自己管理させるためにはどうしたらよいか?
それは「作業マニュアル」と「スケジュール表」を作成させることです。
うちの会社では各業務毎に作業の流れや手順、目的などを分かりやすく図や写真を用いて分かりやすく表示したマニュアルを作成しています。効率よく作業ができるようにする事が目的です。
それを見ながら作業をすることによって無駄な動作や作業を防ぐ動機づけにもなりますし、かなり効果があります。
発達障害のある人、特に自閉症スペクトラム障害のある人は言葉で入ってくる情報が頭の中で整理できず混乱してしまうので目で見てすぐに分かるようにした方がいいのです。これを視覚的構造化と言います。
また、こだわりの強い人が無駄な作業をするのを防ぐ為に、その日のやるべきことの予定を一覧表にした「スケジュール表」を作成しています。これは自分の仕事を計画的に自己管理ができるようにするためです。
スケジュール表の作成の目的
もし部下や同僚にこだわりの強い人がいたら、どれくらいの作業スピードならミスのない仕事ができるか本人とよく話し合い目標設定をしたうえでそれをスケジュール表に落とし込み常に確認できるようにしたらいいと思います。無駄な作業が減る動機付けになると思います。
具体的には以下の通りです。
- 仕事をいつまでにやればいいのか
- どこでやればいいのか
- 何をやればいいのか
- どれくらいの量をやればいいのか
- どうやってやればいいのか
こだわり強い自閉症スペクトラム障害のある人への接し方 まとめ
もし、家族や職場にこだわりの強い自閉症スペクトラム障害の方がいたら接し方は大変です。
私の勤めている特例子会社ではASDのある人に対して次のように接しています。
- ASDのある人は指示や質問が曖昧な表現だと理解できないので、抽象的な表現は使わずになるべく具体的な言葉で伝えるようにする
- ASDのある人は耳から入ってくる言葉の情報の処理が苦手で、目から入ってくる文字や絵などの情報の方が理解しやすいので、口頭よりもメールやメモ、図や絵などの視覚情報で伝えるようにする
- 視覚や聴覚に敏感な人のために、ノイズをシャットアウトするイヤホンの使用を認める、光を遮断するために席にパーティションを設置するなどの配慮をする
- ASDのある人は言葉を額面通りに受け取ってしまうので、叱責するよりも良い面を評価するようにする
会社によって程度の違いはあるかと思いますが、やはり障害に対する合理的な配慮があるのは障害者枠か特例子会社です。一般の会社だとそうはいきません。
私の会社ではさすがに特例子会社だけあってこだわりの強い人に対してもその特性を絶対に否定せず、スケジュール表やマニュアルなどを作成し、毎日作業の振り返りをすることによって障害を持つメンバーに対しても効率的な作業が出来るようにサポートしています。
個人(友人)、家族、会社でしたら同僚や部下にASDのある人がいらした場合、私の勤めているASDのある人への接し方の取り組みが参考になるかと思います。
障害があってなかなか仕事ができないと悩んでいる人、職場にこだわりが強い人がいてどう対応したらいいか分からないという方、この記事は参考になりましたでしょうか?
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